症状
ピロリ菌がつくるアンモニアで胃に炎症や潰瘍
ピロリ菌は、感染してすぐは自覚症状がないまま経過しますが、やがて胃にさまざまな悪影響を及ぼします。
ピロリ菌は、胃酸による強い酸性の胃の中で生き抜くために、胃内の尿素を分解してアンモニアを発生させ、自分の周囲の酸性を和らげようとします。
ピロリ菌が発生させるアンモニアが胃の粘膜を刺激すると、胃酸から粘膜を守る役割をする粘液が減ります。その結果、粘膜が胃酸にさらされることになり、炎症や潰瘍が生じる原因になります。また、ピロリ菌自身も毒素を出しています。
ピロリ菌の感染は、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍を引き起こします。
これらの病気の症状は以下のとおりです。
● 胃もたれ
● 食後の腹痛
● 空腹時の胃痛
● 胸やけ
● 吐き気
● 食欲不振
また、ピロリ菌の感染は胃がんの原因にもなります。
ピロリ菌に感染しているから必ず胃がんになるというわけではありませんが、WHOはピロリ菌を「確実な発がん物質」と認定しており、胃がんの発症リスクが高めることがわかっています。
原因
乳児期に口から感染
原因は、胃にピロリ菌が感染することです。
感染経路ははっきりとはわかっていませんが、上下水道が整備されていない国では、飲料水や感染者の便からピロリ菌が検出されたという報告があります。
ほとんどの場合は、乳児期に口から感染していると考えられています。成人してから感染する可能性は低いといわれています。
これは、胃酸の酸性度が未熟な乳児期が、感染者である親からの食べ物の口移しなどで感染するのではないかとも考えられています。
診断と治療
ヘリコバクター・ピロリ菌感染症の診断
ヘリコバクター・ピロリ菌感染症の診断は、胃の中にピロリ菌がいるかどうかを調べる検査で行います。
以下の検査で感染を確認することができます。検査を組み合わせて行うことでより正確な診断につながります。
1) 内視鏡検査をする場合
内視鏡で胃の状態を観察し、胃の組織を採取して以下の検査を行います。
● 迅速ウアレーゼ検査
ピロリ菌がつくりだすアンモニア量を調べます。
● 検鏡検査
直接、顕微鏡で組織を観察することで、ピロリ菌を確認します。
● 培養検査
採取した組織を培養することにより、ピロリ菌が培養されれば、感染していると診断できます。
2) 内視鏡検査をしない場合
内視鏡検査をしない場合は、以下の検査を行います。
● 抗体検査
血液中のピロリ菌に対しての抗体値を調べる検査です。
● 尿素呼気試験
検査用の薬を飲み、吐き出した呼気中の尿素値を調べます。
● 便中抗原測定
便の中にピロリ菌がいるかどうかを調べます。
ヘリコバクター・ピロリ菌感染症の治療
ピロリ菌に感染していると診断された場合には、除菌療法が行われます。
除菌は経口薬で行います。
3種類の薬を1日2回、1週間服用します。6週間後に効果を判定する呼気テストを行い、ピロリ菌が消滅していれば除菌成功です。
約30%程度の方は不成功になりますが、二次除菌、三次除菌も設定されており、根気よく継続することが大切です。
医療機関受診のポイント
胃の不快感や不調がつづく場合は早めに受診を
診察室で医師に伝えること
医療機関受診時は、以下のことを担当医師に伝えましょう。
● 具体的な症状と発症期間
● 胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの既往歴
● 内服している薬剤があれば、薬剤名
受診すべき診療科目
● 内科
● 消化器科