症状
胃にアニキサス虫が侵入すると、激しい上腹部痛、吐き気、嘔吐を発症
アニサキス症は、魚介類と一緒に体内に侵入したアニサキス虫が体内のどこに侵入するかにより症状は異なります。
1) 胃アニサキス症
最も多いアニサキス症は、胃にアニサキス虫が侵入して発症する「胃アニサキス症」です。アニキサス症のほとんどは、胃アニキサス症です。
食後2~8時間後に激しい上腹部痛、悪心、嘔吐などの症状が出るのが特徴で、激しい症状から「劇症型アニサキス症」と呼ばれる場合もあります。
また、ごく稀にアニサキス虫が胃に停滞していても症状が出現しない「緩和型アニサキス症」もあり、定期検診などで胃内視鏡検査を受けた時に偶然アニサキス虫が発見されることもあります。
2) 腸アニサキス症
アニサキス虫が小腸や大腸などの腸に侵入することにより発症するのが「腸アニサキス症」です。
胃アニサキス症と同様に、激しい腹痛、悪心、嘔吐などの症状が見られますが、食後10時間経過した後に症状が出現します。稀に数日後に症状が出現する場合もあります。
腸アニサキスでは、腸の働きが弱くなり腸内に食物などが詰まってしまう「腸閉塞」、腸に穴が開いてしまう「腸穿孔」などの症状を引き起こすことがあります。
3) 消化管外アニサキス症
アニサキス虫が胃や腸などを突き抜けてしまい、腹腔や胸腔に侵入してしまうのが「消化管外アニサキス症」です。
腹腔や胸腔には多くの臓器が存在し、これらの臓器にアニサキス虫が侵入することにより、さまざまな症状を引き起こしてしまいます。
侵入する臓器などにより症状は異なりますが、胃や腸などの消化管を突き破り腹腔や胸腔に侵入しているため、腹痛や悪心、嘔吐などの症状はもちろん、消化管穿孔としての症状も伴います。
4) アニサキスアレルギー
アニサキス虫が体内に侵入することにより、アレルギー症状が発症してしまうのが「アニサキスアレルギー」です。
蕁麻疹などのアレルギー症状だけにとどまらず、場合によってはアナフィラキシーショックを引き起こすこともあります。また、血圧低下、呼吸困難、意識消失などの重篤な状態を引き起こすこともあり、最悪の場合は命に関わる状態にもなってしまいます。
原因
魚介類に潜む線虫であるアニキサス虫が体内に侵入することで発症
アニサキス症は、線虫の一種であるアニサキス虫が体内に侵入することにより発症します。アニサキス虫は体調2〜3cm程度で、肉眼でも確認することができます。
アニサキス虫は魚介類を食べることにより、体内に侵入します。
アニサキス虫の侵入経路となる魚介類は日本近海で漁獲されるもので、その数は160種類を超えるといわれています。その中でも特にアニサキス症の発症原因として多いのがサバです。その他にもアジ、イワシ、イカ、サンマなどがあります。
魚介類を生食する食習慣がある日本は、諸外国と比べても圧倒的にアニサキス症が多く報告されています。国立感染症研究所の報告では、2005年〜2011年の年間平均患者数が約7,100件とされていますが、欧州での累計患者数は2005年までで約500件、米国では約70件と報告されています。
日本で初めてアニサキス症の原因となるアニサキス虫が確認されたのが、1960年代で、1970年代以降、内視鏡の進歩によりアニサキス虫の摘出が可能になりました。
診断と治療
アニキサス症の診断
アニサキス症の診断は、魚介類を生食で摂取した食事歴と、急激な腹痛、悪心、嘔吐などの症状をまずは問診を行います。
胃内視鏡検査を実施し、アニサキス虫を確認することにより診断されます。
胃内にアニサキス虫がいない場合、腸アニサキスが疑われる場合には、超音波検査が行われる場合もあります。また、胃や腸に穴が開いてしまう穿孔時には、腹腔や胸腔にフリーエアーと呼ばれる特徴的な画像変化が見られるため、単純X線撮影を行う場合もあります。
血液検査にて特異IgEアニサキス検査、アニサキス抗体検査を行うことにより、アニサキス症の診断基準ともなります。
これらの検査にて数値に異常がなければ、アニサキス症の可能性はほとんどないといわれています。胃アニサキス症がアニサキス症の大部分を占めるため、症状、血液検査、胃内視鏡による診断をして、そのままアニサキス虫を摘出するという流れが一般的になります。
アニサキス虫と同様に線虫による病気としては、糸状虫症(しじょうちゅうしょう)、回虫症(かいちゅうしょう)、顎口虫症(がくこうちゅうしょう)などがあります。
アニキサス症の治療
アニサキス症は、アニサキス虫を摘出することにより、症状は改善します。胃内視鏡にてアニサキス虫が発見された場合には、アニサキス症を診断、そしてそのまま摘出します。
胃アニサキス以外の、腸アニサキス症、消化管外アニサキス症、アニサキスアレルギーに対しては、対処療法が行われます。
胃や腸に穿孔がある場合には、内視鏡による処置、状態によっては外科的手術が必要となる場合もあります。アニサキス虫を退治する駆虫薬は開発されておらず、効果的な薬剤治療などは存在しません。
予防
魚介類は加熱して摂取することが有効な予防法
アニサキス症の予防は、魚介類を加熱して摂取することが有効な予防法です。
60℃で1分以上の加熱処理がされれば、アニサキス虫は死滅してしまいます。また、冷凍処理も有効とされていますが、-20℃で24時間以上の処理が必要となります。
アニサキス虫は魚介類の内臓に寄生しているため、新鮮なうちに魚介類の内臓を処理することも、アニサキス症の予防には有効であるといわれています。
アニサキス症は食品衛生法でも食中毒のひとつとして注意喚起がされています。アニサキス症を診断した医療機関は、24時間以内に保健所に届出しなければなりません。
医療機関受診のポイント
魚介類を生で食べた後に激しい腹痛、悪心、嘔吐がでたらすぐに受診を
診察室で医師に伝えること
医療機関を受診する際には、下記の内容を担当医師に伝えるようにしましょう。
● 症状の発症時期と程度
● 魚介類を生色したかどうか
● 蕁麻疹や呼吸苦などのアレルギー症状の有無
受診すべき診療科目
● 消化器科
● 内科