症状
飲み込んだ物質や停滞している体内の場所によって症状は異なる
1) 異物誤飲
異物誤飲の症状は、飲み込んだ物質によって異なります。また、物質が体内のどこに停滞しているかによっても異なります。
● 食道で停滞した場合
唾液を飲み込むことができずによだれの量が増えたり、食べ物が飲み込みにくかったり、飲み込むときに痛みを生じたりします。
ひどい場合には呼吸困難や胸痛などの症状が出ることもあるので、注意が必要です。
● 胃にたどり着いた場合
症状がなく、そのまま便と一緒に排泄される可能性が高くなります。
ただし、消化管のどこかで停滞して閉塞や穿孔を起こす危険性があります。その場合は痛みや違和感、嘔吐、吐血などの症状が見られます。
2) 毒物誤飲
毒物誤飲を起こした場合も、何を誤飲したかによって症状は大きく異なります。
消化管粘膜に直接炎症を起こすケースと、消化管で物質が吸収されて中毒症状に至るケースなどが考えられます。深刻になると、呼吸困難やけいれん、意識障害を起こします。
異物誤飲、毒物誤飲のどちらでも、乳幼児は痛みや不快感を言葉で表現できないため、機嫌が悪くなったり、拒食をしたりします。
誤飲しても必ずしも食道に入るとは限らず、びっくりした拍子に気道に入ることもあります。その際には咳が出たり、ヒューヒューゼーゼーと喘鳴が現れたりします。
原因
子どもの誤飲でもっとも多い物質は「タバコ」
食べ物以外の物質を誤って飲み込んでしまうことで起こります。
誤飲の原因となる物質は多くあります。
厚生労働省では、平成26年度の小児における誤飲でもっとも多い物質は「タバコ」と発表しています。誤飲事故全体の約2割に当たります。
以下、「医薬品」「金属製品」「プラスティック製品」「玩具」「電池」「洗剤」「硬貨」「乾燥剤」と続きます。
タバコは乳幼児にとって決して美味しいものではないので、吐き出すことも多く、大量のタバコを誤飲することは少ないと考えられています。
しかし、灰皿代わりに使用したペットボトルや空き缶の水を誤飲した事故もあり、その場合には中毒症状が心配です。
ほかにも、平成27年に消費者庁から出された注意によると、高齢者において薬のPTP包装シートの誤飲や乾燥剤の誤飲が増えています。PTP包装シートのまま薬を飲み込んでしまい、PTP包装シートが食道に突き刺さった事例もあります。
診断と治療
異物誤飲の診断
1) 異物誤飲
何を、いつ、どれくらい誤飲したのかを知る必要があります。そして、それがどのような形をしているかも大切な情報です。
その上で、レントゲン撮影によって異物がどこにあるかを確認します。
食道を通過した場合には便と一緒に排泄されることが多いので、経過観察となることが多いです。ただし、形が鋭利なものや大きいもの、磁石、PTP包装シート、高吸水性ポリマーなど体に障害を及ぼす危険のあるものは胃にあっても摘出します。
2) 毒物誤飲
必要に応じて血液検査を行います。
医薬品は小さい子どもの場合、少量でも肝臓など内臓にかかる負担が大きくなります。
また、医薬品の他にも、マニキュアの除光液、灯油、漂白剤などは緊急性が高いとされています。
異物誤飲の治療
1) 異物誤飲
誤飲した物質やその形状によって変わってきます。
食道を通過し、胃に至っている場合は、数日で便と一緒に排泄する可能性が高いので、経過観察をします。
ただし、異物が5cmを超える場合は、閉塞の恐れが出てくるので内視鏡にて摘出します。また、鋭利な形状をしている場合にも、穿孔の恐れがあるので同様に摘出します。他にも、磁石や電池、高吸水性ポリマーなど物質によっても摘出が検討されます。
2) 毒物誤飲
どんな薬物をどれくらい摂取したかが重要なポイントです。吐かせることが有効な場合もありますが、ガソリンや灯油など吐かせることが危険な場合もあります。自己判断では行わずに必ず医療機関に確認しましょう。
医療機関では全身状態に応じて投薬を行うことがあります。大量に薬物を摂取した場合には、胃洗浄(胃の中にある内容物を吸引し洗浄する)を行うこともありますし、深刻なケースでは血液透析を行います。
予防
乳幼児や認知機能が低下している高齢者のいる家庭は要注意
誤飲の危険性が高い乳幼児や、判断力の低下している高齢者と同居している場合には、異物誤飲、毒物誤飲を想定して環境を整える必要があります。
乳幼児のいる家庭では、誤飲事故の上位を占めるタバコや医薬品には特に注意が必要です。乳幼児の手の届かない場所に保管して、置き忘れのないようにしましょう。
タバコや医薬品に限らず、幼児の口に入る大きさのものを幼児の手の届く所には置かないようにして、農薬や漂白剤、洗剤などはカギのかかる戸棚に直すようにしましょう。
高齢者において多いPTP包装シートの誤飲予防としては、薬を1つ1つ切り離さないようにすることが大切です。
PTP包装シートにはミシン目が縦か横の1方向にのみしか入っていません。誤飲を防ぐための工夫なので、なるべくそのまま保管するようにしましょう。保管場所にも気をつけて、食品と間違えて口にすることのないような配慮も必要です。
医療機関受診のポイント
誤飲事故により呼吸困難や意識障害がある場合は救急車を
異物誤飲、毒物誤飲に関わらず、誤飲があれば、速やかに医療機関を受診します。
意識がはっきりしない場合や、呼吸困難がある場合には、すぐに救急車を呼びましょう。
診察室で医師に伝えること
誤飲はいつ、何を、どれくらい、飲み込んだのかという情報が大切で、その内容によっては対処法が異なります。
以下のようことを医師に伝えるようにします。
● 誤飲が起こったのはいつか・または気がついたのはいつか
● 何を飲んだか
※薬品であれば、成分表などの薬品についての情報が書かれたものも持参します。
● どれくらいの大きさまたは量の異物を摂取したのか
● 誤飲した異物はどのような形をしているのか
呼吸困難、意識障害がある場合や、大量の薬品を飲んだ場合には救急車を呼びましょう。
受診すべき診療科目
● 内科
● 消化器科
● 小児科
万が一、誤飲事故が起こった場合には、速やかに医療機関を受診する必要があります。救急外来を受診するとよいでしょう。
閉塞、穿孔の疑いが強い場合や、呼吸困難や意識障害が認められる場合には、救急車を要請しましょう。