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うぃるすせいいちょうえん ウイルス性胃腸炎

ウイルス感染による胃腸炎

症状

下痢や腹痛に加え発熱や嘔吐、血便などの症状が現れることも

ウイルス性胃腸炎の主な症状は、以下のとおりです。
下痢
嘔吐
発熱
血便 など

健康な成人であれば、症状は軽いことが多く、短期間で自然に治まることがほとんどです。ただし、下痢や嘔吐による脱水を起こすことがあるため注意しましょう。

ウイルス性胃腸炎は、原因となるウイルスにより以下のように分類されます。

ロタウイルス感染性胃腸炎
成人も感染や発症することがありますが、乳幼児に多い病気です。約2日間の潜伏期間(感染して症状が現れるまでの期間)の後、血便や粘血便を伴なわない下痢、吐き気、嘔吐、発熱、腹痛などの症状が現れます。多くの場合は、発熱と嘔吐から症状が始まり、1〜2日後に水様便が何度も出るようになります。白色の便が出ることもあります。

ノロウイルス感染症
乳幼児から高齢者まで幅広い年代にみられる感染症です。潜伏期間は1〜2日と考えられており、吐き気や嘔吐、下痢が主な症状です。腹痛や頭痛、発熱、発熱に伴う寒気や筋肉の痛み、喉の痛み、身体のだるさなどの症状が現れることもあります。

アデノウイルス胃腸炎
子どもが感染することが多く、乳幼児の場合は症状が重くなるケースもあります。3〜10日の潜伏期間を経て下痢や嘔吐、吐き気、気分が悪くなる、微熱、腹痛など、ロタウイルス感染性胃腸炎と似た症状が現れます。
アデノウイルスは1型から51型までの種類があり、40型と41型に感染して発症すると胃腸炎の症状が現れます。感染したすべての人に症状が現れるわけではなく、まったく症状が現れない人もいます。ただし、症状がない場合でも、他の人に感染を広げてしまう可能性があります。

アストロウイルス感染症
乳幼児に多い感染症です。1〜4日の潜伏期間の後、嘔吐や発熱は少なく症状も軽い場合が一般的です。

サポウイルス感染症
成人での感染はあまりみられず、乳幼児が感染することが多い感染症です。ノロウイルスとほぼ同じ症状が現れますが、研究が進んでおらず分からない部分も多くあります。

原因

主な原因はロタウイルスとノロウイルスで経口感染する

ウイルス性胃腸炎の主な原因は、ロタウイルスとノロウイルスです。他にもアデノウイルスやアストロウイルス、サポウイルス、アイチウイルスなどが原因となることもあります。

ウイルス性胃腸炎は、主にウイルスが付着した手で口に触ることや、ウイルスに汚染された食品を食べることにより感染します(経口感染)。感染者と同じ部屋で過ごすことや、感染者に触れることで感染することはありませんが、吐いた物や便を処理する時に小さな粒が飛び、吸い込むことがあるため注意が必要です。
吐いたものや便には多くのウイルスが含まれており、少量のウイルスでも感染する恐れがあります。吐いたものや便が付着した衣服やシーツなども感染原となります。ウイルスで汚染されたものを放置すると感染が広がる恐れがあるため、素早く適切に処理することが大切です。

診断と治療

ウイルス性胃腸炎の診断

嘔吐物や便からウイルスの遺伝子が検出されるかどうかを調べる検査(PCR法)があります。
しかし、通常は検査を行わず、周囲に同様の症状が現れた人がいないか、いつからどのような症状が現れたのか、症状が現れる前の飲食物、最近の海外旅行歴などから診断されます。

ノロウイルス抗原検査(ノロウイルス検査キット)は、3歳未満の方、65歳以上の方、悪性腫瘍(がん)と診断されている方、臓器移植後の方、その他検査が必要と判断された場合は、保険適用にて検査を行うことも可能です。詳細は医療機関にお問い合わせください。

ウイルス性胃腸炎の治療

ウイルス性胃腸炎は、自然に症状が軽くなり、治ることが多い病気です。短期間で症状が治ること、特効薬がないことなどから、特別な治療は行わず自然に治るのを待つ場合がほとんどです。

発熱や腹痛などの症状が重い場合には、解熱剤や調整剤、乳酸菌剤などの薬を処方されることがあります。吐き止めや下痢止めは病気の回復を遅らせる可能性があるため、使用しない方が良いとされています。また、水分補給が十分でない場合には脱水を起こすことがあり、脱水の症状が重い場合には点滴による治療を行うこともあります。
臓器移植後の方や抗がん剤治療中の方、免疫抑制剤を使用中の方などは、免疫抑制のための治療を調整することがあります。

予防

感染した人がいる場合は感染拡大防止を

ウイルスの感染を予防すること、また、感染してしまった場合には感染を広げないよう注意する必要があります。ウイルス性胃腸炎は、主に口を介入して感染するため、十分に加熱した食品を食べることや、手を介して口にウイルスが入らないように手洗いを行うことが大切です。

手洗い方法
手洗いは、指輪や時計などの装飾品を外し、よく泡立てた石鹸(ハンドソープ)で爪の隙間や指と指の間、手のシワ、手の甲、手首まで洗い、流水により洗い流します。洗い流した後は、清潔なタオルやペーパータオルで拭きます。しっかりと手指を洗浄することで、手に付着したウイルスをはがれ落としやすくする効果があります。

吐いた物や便の処理方法
感染した人の吐物や便などを処理する際は、使い捨てのマスクや手袋、エプロンなどをしっかり着用します。
吐いた物や便などを拭き取る時は、細かいしぶきができる限り飛び散らないようにするため、ペーパータオルなどで静かに拭き取ります。拭き取り後、ウイルスに汚染された場所や物などは、塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を200倍程度に薄めたもので消毒します。
拭き取りに使用したマスクや手袋、エプロン、ペーパータオルなどは、ビニール袋に入れ密閉して破棄します。吐いた物や便などで汚れた衣類やシーツなども感染源となるため、他の衣類と一緒に洗濯機で洗濯せず、水洗いの後に薄めた塩素系消毒剤で消毒を行います。
吐いた物や便が乾燥すると空気中にウイルスが漂い、口に入って感染することもあるため、乾燥する前に速やかに処理する必要があります。

食品からの感染を防ぐ
ウイルスを持った貝類(二枚貝)を生で食べることで、胃腸炎の原因となるウイルスに感染することがあります。感染予防のためには、90秒以上85〜90度以上で貝の中心部までしっかりと加熱調理することが望まれます。
また、調理者の手指や調理器具、食器なども、洗浄後に熱湯で煮沸消毒(85度以上で1分以上)を行うか、薄めた塩素系漂白剤で消毒することがすすめられています。

【ロタウイルスの予防接種】
乳幼児に多いロタウイルスは、予防接種があります。
ロタウイルスに初めて感染した時は症状が重く、2回目以降では症状が軽くなる特徴から、ロタウイルス胃腸炎の重症化を予防するためのものです。生後6〜40週までの間に2〜3回のワクチン接種を行います。
予防接種の注意事項は、接種する前に医療機関に確認しましょう。

医療機関受診のポイント

重症化しやすい乳幼児や高齢者は早めに受診を

嘔吐や下痢などの症状が現れた場合に受診します。特に、乳幼児や子ども、高齢者は、重症化したり、脱水症状を起こしたりすることがあるため、無理をせず早めに受診するようにしましょう。

診察室で医師に伝えること

ウイルス性胃腸炎で受診する際は、医師に以下を伝えるようにしましょう。

保育園、幼稚園、学校、職場、家庭などで同じような症状が現れている人がいないか
症状が現れた時期
症状が現れる前に飲食した物
嘔吐や下痢の回数
吐いた物や便の性状
腹痛や頭痛、発熱、身体のだるさなど全身症状の有無や程度
治療中の他の病気、使用している薬
症状が現れてから使用した薬(市販薬含む)
水分補給や食事ができているか(脱水の有無)
最近の海外渡航歴(場所や滞在時期)

受診すべき診療科目

内科
消化器科
小児科

ウイルス性胃腸炎の検査を行っていない医療機関もあるため、検査を希望する場合は事前に確認しましょう。
また、嘔吐や下痢などの症状がある時に受診する場合は、他の患者やスタッフへの感染を予防するため、受診前に申し出ると良いでしょう。

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