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かんぴろばくたーかんせんしょう カンピロバクター感染症

カンピロバクター属の細菌感染による胃腸炎

症状

下痢や嘔吐など食中毒症状が見られる

カンピロバクター感染症の主な症状は以下のとおりです。

下痢
腹痛
嘔吐
悪心
悪寒
倦怠感

他の感染型細菌性食中毒と似ていますが、潜伏期間が2~5日間とやや長いこと、消化器症状が出る前に発熱(38度台)や頭痛・筋肉痛の出現、血まじりの便が出ることがカンピロバクターの特徴です。
重症になると激しい下痢のため、急速に脱水症状となり、子どもや高齢者では血液にまで菌がまわってしまう敗血症になることがあります。

また、発症2~3週間後にギラン・バレー症候群を起こすことがあります。
ギラン・バレー症候群の症状として、手足に力が入らなくなり歩けなくなる、手足のしびれ感や感覚が鈍くなる、顔の動きや目の動きや舌の動きが悪くなるなどが挙げられます。カンピロバクターの一部には、運動神経と同じ構造があります。本来ならカンピロバクターを攻撃するべき抗体が、間違えて運動神経を攻撃してしまうため発症するといわれています。

原因

汚染された食品が原因となる食中毒による感染

カンピロバクター感染症の原因は、汚染された食品が原因となる食中毒による感染と、感染者やペットの糞便などが原因となる感染があります。

1) 飲食物による感染
汚染された食品や、加熱が不十分なものを食べた場合(鶏肉、生レバー、井戸水など)
汚染された調理器具や手指を介して二次的に汚染された食品を食べた場合(原因となりやすい調理器具:まな板、包丁など)

2) 感染したものに触れたことによる感染
感染者の便処理後に、手洗いや消毒が不十分なことで、汚染された手指を介して接触感染する場合
汚染された箇所(感染者が排便後などに触れたドアノブやテーブルなど)に触れることで手指が汚染されてしまう場合
ペットと触れ合うことで手指にカンピロバクターが付き、感染する場合(原因動物:犬、猫など)

診断と治療

カンピロバクター感染症の診断

カンピロバクター感染症の診断は、糞便、腸液など、生検組織の培養を行います。結果がわかるまで2~3日必要です。
血便も比較的多くみられますが、この場合は潰瘍性大腸炎と区別する必要があります。

カンピロバクター感染症の治療

自然と治ることが多く、下痢や嘔吐による脱水症状を防ぐための水分と電解質の補給を中心に行います。
脱水症状はひどい場合には点滴による治療を行うこともあります。

尚、下痢止めは、カンピロバクターを含んだ便の排泄を止めてしまい、症状を長引かせてしまう可能性があるので、原則的には使用しません。
カンピロバクターなど、悪い菌を退治するための、元来腸内に存在すべき腸内細菌叢を回復させるため、整腸剤や乳酸菌製剤(ビオフェルミンなど)を投与することがあります。

症状が重くなってしまった場合や、敗血症となってしまった場合、または子どもや高齢者などには、対処療法とともに適切な抗菌薬が投与されることもあります。

予防

食品は加熱処理し、調理器具の洗浄・手洗いの励行を

肉を調理する時は十分に加熱処理しましょう。
また、調理器具や指を介した生食野菜・サラダへの二次感染にも極力注意することが大切です。
カンピロバクターは乾燥した環境では生存性が低いことから、調理器具・器材の清潔、乾燥に心がけることも重要です。
イヌやネコなどペットからの感染例も報告されており、ペットの衛生的管理が必要です。

医療機関受診のポイント

嘔吐がつづき水分摂取が難しい場合は速やかに受診を

胃腸炎症状が続く場合や水分摂取が難しい場合は、医療機関を受診しましょう。
特に、子どもや高齢者は脱水症状がわかりにくいことがあり、全身倦怠感が強い時やグッタリした時は救急外来を受診しましょう。

診察室で医師に伝えること

医療機関を受診した際は以下のことを医師に伝えましょう。
腹痛の程度(痛みの場所、いつからか、どんな痛みか、食事との関係、鎮痛剤などの薬を服用したか)
下痢の状態(便の色、いつから出現したか)
吐き気・嘔吐、発熱の有無
発症前の食べ物
水分摂取の有無
持病の有無

受診すべき診療科目

内科
消化器科
小児科

大人は内科、もしくは消化器科、子どもは小児科を受診しましょう。

かんぴろばくたーかんせんしょう カンピロバクター感染症