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へのっほ・しぇーらいんしはんびょう(あいじーえーけっかんえん) ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(IGA血管炎)

軽く盛り上がったしこりのある紫斑がでる

症状

軽く盛り上がったしこりのある皮下出血(紫斑)がでる

ヘノッホ・シェーンライン紫斑症の特徴的な症状は、紫斑です。

【紫斑の特徴】
紫斑とは軽く盛り上がったしこりのある皮下出血です。
色や大きさは均一ではない
発症後数日で複数の紫斑が現れる
子どもの場合は、お尻や太もも、背中、腕などに現れやすい
成人の場合は、足の膝より下の部分に現れやすい
乳児の場合は顔に現れることもある

【紫斑以外の症状】
へノッホ・シェーンライン紫斑症では、紫斑以外に以下のような症状を伴うことがあります。
発熱
腹痛
関節痛
腎臓の炎症

症状が重い場合には、激しい腹痛や血尿、タンパク尿などが続き、腎障害を発症することがあるため注意が必要です。
また、紫斑以外にも、水泡(水ぶくれ)、血包(血液を含んだ水ぶくれ)、皮膚の深い部分まで傷つく潰瘍などが現れることもあります。

原因

細菌やウイルスの感染、薬剤など

ヘノッホ・シェーンライン紫斑症は、細菌やウイルスの感染、薬剤、妊娠、悪性腫瘍(がん)などが原因となり発症すると考えられています。
小児の場合は、約半数が鼻や喉の炎症である上気道感染症の後に発症しています。成人の場合は発症することが上気道感染よりも内臓の感染症が原因となっているケースもあります。

ヘノッホ・シェーンライン紫斑症を発症すると考えられる細菌やウイルスは以下のとおりです。
A群溶血性連鎖球菌(溶連菌):咽頭炎や扁桃炎を引き起こす
水痘ウイルス:水疱瘡を起こす
B型肝炎ウイルス:肝臓の慢性的な炎症を引き起こす
ヒトパルボウイルスB19:伝染性紅斑(リンゴ病)を引き起こす
など

診断と治療

ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(IGA血管炎)の診断

ヘノッホ・シェーンライン紫斑症が疑われる場合、血液検査や尿、便などの検査が行われます。
また、成人では皮膚の病理組織学的検査が積極的に行われる傾向にあります。
激しい腹痛のような腹部症状がある場合は、内視鏡検査が行われる場合もあります。また、血尿やタンパク尿、腎機能障害がある場合には、腎生検により腎臓の組織を一部採取し、病理組織学的検査が進められる場合もあります。

血液検査
血液を採取して行われる検査です。ヘノッホ・シェーンライン紫斑症では、血液検査でCRP上昇や赤沈亢進、末梢血白血球数の増加など、炎症が起こっている状態の結果がみられます。また、血液の成分である血清のIgAが上昇する特徴があります。

尿検査
尿を採取し、その成分を調べます。ヘノッホ・シェーンライン紫斑症では、腎障害から尿に血液やタンパク質が混じっていることがあります。

便潜血検査
便を採取し、血液や血液の成分が混じっていないかどうかを調べる検査です。ヘノッホ・シェーンライン紫斑症では、大腸に炎症や潰瘍ができることがあり、便に血液や血液の成分が混じることがあります。

病理組織学的検査
皮膚や組織の一部を採取し、専用の薬液で染めて顕微鏡で詳しく調べる検査です。

内視鏡検査
消化管を直接カメラで観察するために行われる検査です。胃や食道、十二指腸などを観察するため、口や鼻からカメラを挿入する「上部内視鏡検査(胃カメラ)」と、肛門からカメラを挿入して大腸の観察を行う「下部内視鏡検査(大腸カメラ)」があります。ヘノッホ・シェーンライン紫斑症では、消化管に紫斑や炎症、潰瘍ができることがあります。

腎生検
腹部に局所麻酔を行い、超音波で調べながら針を刺し、腎臓の組織を一部採取します。

ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(IGA血管炎)の治療

ヘノッホ・シェーンライン紫斑症は、症状の度合いにより治療方法が異なります。
症状が軽い場合は、安静にして水分摂取を行いながら様子をみます。また、皮膚症状や発熱、腹痛、関節痛などを抑えるための対症療法が行われます。多くの場合は自然に症状が治まりますが、一旦治った後に強い症状が現れることもあるため、定期的な受診や検査を行うことが大切です。

皮膚症状
血管強化薬や止血薬などが使用されます。

関節痛
非ステロイド抗炎症薬などが使用されます。

腹部症状
絶食や輸液(点滴)などが行われます。症状が治まらない場合は、副腎皮質ステロイド薬が使用されることもあります。

腎障害
副腎皮質ステロイド薬を中心とした治療が行われます。症状が治まらない場合は、一度に大量のステロイドを投与するステロイドパルス療法や免疫抑制剤併用療法が行われることもあります。

医療機関受診のポイント

皮膚に紫斑が現れ、発熱や関節痛、腹痛などの症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。

診察室で医師に伝えること

ヘノッホ・シェーンライン紫斑症は、症状の度合いにより検査方法や治療方法が異なります。
以下の内容を伝えることで、スムーズな検査や診断、治療が行いやすくなります。
紫斑の大きさや発生している範囲
喉の痛みや咳など上気道炎症状の有無
関節痛や腹痛、発熱などの症状の有無や程度
感染症に感染しているかどうか
周囲で流行している感染症の有無
食事や水分摂取ができているかどうか

受診すべき診療科目

皮膚科
アレルギー科
消化器内科

へのっほ・しぇーらいんしはんびょう(あいじーえーけっかんえん) ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(IGA血管炎)