症状
ドロっとした血が混じった便が出るのが特徴
潰瘍性大腸炎では、大腸に慢性的な炎症が起きて、腸の壁にびらん(ただれ)や潰瘍(傷が深くえぐれた状態)ができたりします。
炎症は肛門に近い直腸から結腸の方に広がっていきます。ただし、炎症の範囲には個人差があります。
潰瘍性大腸炎の特徴として、症状が緩和する寛解期と、血便などの症状が現れる活動期を繰り返します。
活動期には、主に以下のような症状がみられます。
● 下痢
● 粘血便 (ドロっとした血が混じった便)
● けいれんを伴う腹痛
● 発熱
● 体重減少
● 貧血 など
原因はわかっていないものの、精神的なストレスが症状を悪化させる要因の1つと考えられています。
また、潰瘍性大腸炎は腸管穿孔、中毒性巨大結腸症、大腸がんなどの腸管合併症を引き起こすことがあります。
そのほか、以下のように、全身にさまざまな合併症を引き起こす場合もあります。
● 虹彩毛様体炎
● アフタ性口内炎
● 強直性脊椎炎
● 原発性硬化胆管炎
● 関節炎 など
原因
はっきりした原因はわかっていません
大腸に炎症を起こす病気には、ウイルスや細菌感染など原因が明確な特異性腸炎と、はっきりした原因のわからない非特異性腸炎があります。
潰瘍性大腸炎は、非特異性大腸炎の1つで、はっきりとした原因がわかっていません。そのため、日本では難病に指定されています。
症状を悪化させる要因としては、精神的なストレスが関係していると考えられています。
診断と治療
潰瘍性大腸炎の診断
潰瘍性大腸炎の診断は、ほかの病気と区別し、慎重に行われます。
検査を行うことで、特に症状が似ている感染性腸炎、クローン病、放射線性腸炎などの可能性を除外し、診断します。
主な検査は以下のとおりです。
● 便検査
細菌などによる感染症ではないかを確認します。
● 大腸内視鏡検査
内視鏡で大腸の状態を観察し、びらんや潰瘍の広がりを確認します。
● 病理検査
内視鏡で病変部の組織を採取し、調べます。
また、潰瘍性大腸炎は、炎症の広がりにより、以下4つのタイプに分類されます。
● 直腸型…炎症の範囲が直腸のみ
● 遠位大腸炎型…炎症の範囲が直腸とS状結腸に及んでいるもの
● 左側大腸炎型…炎症の範囲が下行結腸と横行結腸の境目=脾湾曲部まで及んでいるもの
● 全大腸炎型…炎症の範囲が脾湾曲部を越えて及んでいるもの
潰瘍性大腸炎の治療
潰瘍性大腸炎の治療は、症状が落ち着いている状態=寛解期を維持することが目標になります。
症状があれば寛解期に導く「寛解導入療法」、症状が落ち着いている寛解期であれば「寛解期維持療法」をとります。
治療の基本はお薬による薬物療法です。
5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド薬、免疫抑制剤などが使用されます。
特に5-アミノサリチル酸製剤が治療の基本となり、炎症細胞から出る活性酸素を除去し、炎症を抑える作用があります。
以下の場合は、大腸をすべて切除・摘出する手術が検討されます。
● 大出血や穿孔の緊急事態が起きたとき
● 薬物療法では改善せず、生活の質が著しく低下したとき
潰瘍性大腸炎は、完治は難しい病気ですが、多くの人が寛解期を維持することができています。
寛解期を維持するためには、適切な治療を継続すること、定期的に検査を受けることが大切です。
また、暴飲暴食を避け、バランスの良い食生活を心がけること、ストレスを貯めないこともポイントです。
医療機関受診のポイント
血便が見られる場合は症状が治まっても受診しましょう
潰瘍性大腸炎は粘血便がみられます。
症状は治まったり、悪くなったりを繰り返します。いったん症状が落ち着いても、炎症自体は拡大していく可能性もあります。
気になる症状がある方は早めに医療機関を受診しましょう。
診察室で医師に伝えること
以下の点を受診時に医師へ伝えましょう。
● 親族に潰瘍性大腸炎、クローン病にかかった人がいるか
● 血便の有無
● 現在内服している薬があるかどうか
● 今までにかかったことのある病気があるか
受診すべき診療科目
● 内科
● 消化器科
血便がある場合は、消化器系の異常とわかりやすいので消化器科を受診しましょう。
腹痛や発熱などの症状でとどまっている場合は、原因がはっきりしないので、一度内科を受診するとよいでしょう。