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つうふう・こうにょうさんけっしょう 痛風・高尿酸血症

痛風は激しい関節炎を引き起こす

症状

関節の強烈な痛み・腫れが特徴的でこぶができることも

高尿酸血症そのものには、自覚症状はなく、健康診断などで行われる血液検査の尿酸値を確認しなければ、ほとんど気づきません。
そのため、高尿酸血症から痛風へと進行し、痛風発作が起きてから高尿酸血症とわかる方も多くいます。

痛風発作の症状は以下のとおりです。
尿酸が溜まりやすい膝や手・足指の関節、そして耳などの部位に炎症が起こることで症状が現れます。

炎症部位が赤く腫れ、熱を持つ
炎症部位が激しく痛む
炎症部位(関節)にこぶのようなものができる=痛風結節

痛風発作は、強烈な痛みで、人によっては関節を動かせず、生活に支障が出ることもあります。
ただし、痛風発作は、数日経つと自然に治るという特徴があります。そのため、治療せず放置してしまう方もいますが、発作は定期的に起こり、その間隔も短くなる場合もあります。また、高尿酸血症を放置すると、痛風だけでなく、尿路結石や腎臓の障害を合併することもあるため、症状が治まったからと放置せず、適切な治療を受けることが大切です。


【痛風発作とよく似た症状を引き起こす病気】
変形性関節症
偽痛風
関節リウマチ など

変形性関節症は加齢によって起こりやすいもので、偽痛風は関節の中が石灰化しているので画像診断で判断できます。
男性に多い痛風に対して、関節リウマチは女性に多い病気で、痛みは慢性的であるのが特徴です。

原因

痛風の原因となる高尿酸血症は食事・飲酒・肥満から

高尿酸血症の原因は、食事や飲酒、肥満です。
尿酸はプリン体の老廃物です。尿酸の産出が多くなったり、排泄が低下すると、尿酸が体内に蓄積され、高尿酸血症の状態になります。
この状態がつづくと、尿酸が結晶となって関節などに溜まり、痛風を引き起こします。

食事
食事でプリン体を多く摂取すると、それだけ多くの尿酸がつくられ、体内に蓄積します。
プリン体の多い食品には、にぼしや干ししいたけ、レバーなどがあります。

飲酒
お酒は、プリン体が多い方ではありませんが、よく飲む習慣がある方は、その分プリン体の摂取量が増えているので、高尿酸血症のリスクも高まります。
また、アルコールには食欲増進効果があり、食べ過ぎることで、プリン体を多く摂取してしまうこともあります。

肥満
肥満が高尿酸血症の原因となる理由は、内臓脂肪にあります。内臓脂肪が多い人は、脂肪細胞から遊離脂肪酸という物質が分泌されます。この遊離脂肪酸は肝臓においてプリン体の代謝を活発にします。代謝されたプリン体は尿酸となって体に溜まるようになります。なお、日本生活習慣病予防協会の調査によると、痛風患者さんの37%はメタボリックシンドロームであると報告されています。

診断と治療

痛風・高尿酸血症の診断

高尿酸血症と痛風の診断方法は以下のとおりです。

1) 高尿酸血症の診断方法
血液検査にて、尿酸値が7.0mg/dl以上であれば高尿酸血症と診断されます。
高尿酸血症は、尿酸産生過剰型・尿酸排泄低下型・混合型の3つに分けられます。どれに当てはまるかは、血液検査と尿検査にて尿酸クリアランスとクレアチニンクリアランスの数値を測ることで診断できます。
検査前日は夜の食事を軽いものにして、検査当日は朝絶食となります。検査は、まず水を飲んで排尿します。そこから1時間尿を溜め、再び排尿した尿を検査します。最初の排尿から30分経った頃に採血をして、血液と尿の結果をあわせてどの病型か判断します。

2) 痛風の診断方法
痛風かどうかは、以下の症状と検査結果から診断します。

足指や膝など、関節が腫れて痛む痛風発作がある
高尿酸血症の既往がある
関節液検査で尿酸塩結晶が確認できる

関節液検査とは、関節に針を刺して関節液を抜き、その成分を調べる検査です。痛風の診断に関しては、関節炎を症状とする他の病気と区別するため、CTや超音波検査などの画像診断も行うことがあります。

痛風・高尿酸血症の治療

痛風・高尿酸血症の患者さんは、他の生活習慣病があったり、生活習慣病予備軍であるという傾向が多く見られます。高尿酸血症から痛風への進行、またその他の合併症を引き起こさないために、まずは生活習慣の見直し・改善することからはじめます。

1) 高尿酸血症の服薬治療
尿酸値の推移を見ながら薬での治療を検討します。高尿酸血症では腎障害を合併することがあるため、腎臓の合併症を予防する目的として内服治療を行うこともあります。内服を開始するかどうかは、まず尿酸値が8.0mg/dl以上であるかどうかを基準とします。その上で、他にかかっている病気の有無とその状態を見ながら判断していきます。
治療薬は、病型によって尿酸排泄を促進するものと尿酸の生成を抑えるものから選択し、副作用が出ないよう注意しながら、必要に応じて薬の量を変更していきます。

2) 痛風の治療
痛風発作の関節炎を抑える薬を内服します。痛風発作をよく繰り返している場合には、1日1錠予防的に内服して発作を抑える治療方法もあります。また、痛風発作に対しては、非ステロイド抗炎症やステロイド薬を使うこともあります。
痛風結節を生じている場合は、その状態によって手術で摘出することもあります。
痛風発作の間は、関節炎が起きている部位をできるだけ安静に保ち、冷やすようにして対処しましょう。

予防

バランスの良い食生活と運動習慣、健康診断の定期受診を

高尿酸血症の予防は、バランスの良い食生活と運動不足にならない生活を心がけることです。
食事は高脂肪や糖分の多いもの、プリン体を多く含む食品を摂りすぎないようにします。また、お酒も飲みすぎないようにすることが大切です。水分を多く取り、肥満を回避するために定期的に運動する習慣を取り入れるようにしましょう。

高尿酸血症は痛風にまで進行しないと、ほとんど自覚できる症状がなく尿酸値の異常で気づくことが多いため、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。痛風は、高尿酸血症が進行して起こるため、高尿酸血症にならないことが最大の予防方法です。

医療機関受診のポイント

関節炎が出たら症状が治まっても医療機関の受診を

高尿酸血症は、痛風まで進まない限り、ほとんど症状がないので自分では気づきにくいものです。健康診断で尿酸値に異常があった場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。また、数ヶ月ごとに関節炎がある場合には痛風発作の可能性があるので、医療機関を受診してください。症状が治まったからと放置せず、治療を受けることが大切です。

診察室で医師に伝えること

痛風・高尿酸血症で診察を受ける際には、以下のことを医師に伝えるようにしましょう。

家族など近い血縁に尿酸値が高い人や痛風の人がいるかどうか
関節の腫れや痛みがあるかどうか
関節が腫れる場所、腫れや痛みが生じる頻度やそのときの状態
普段の食生活の内容
飲酒機会の頻度や飲酒量

受診すべき診療科目

内科
代謝・内分泌科

高尿酸血症は無症状のことが多いため、健康診断などの検査で初めて分かるというケースがよくあります。まずは内科を受診しましょう。

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