症状
足のつけ根やお尻の痛み
骨折により、以下のような症状が出ます。
● 足のつけ根やお尻の痛み
● 足が動かない
骨折により、骨が本来の位置から大きくずれてしまうと、足が動かせなくなります。
逆に、骨折していても大きなずれがないと、痛みはあるものの、歩ける場合もあります。
● 大腿骨骨頭壊死
骨折の際に、骨に栄養を届ける血管にキズがついてしまった場合、十分な栄養が行きわたらなくなることがあります。手術などで骨折自体が治癒しても、数年後に大腿骨骨頭壊死が起こることにより、痛みを感じることがあります。
認知症が重い人は、痛みに対して鈍感だったり、痛みを訴えられないことがあります。
痛みを訴えないものの、もともと歩いていた人が急に歩かなくなったときは、この骨折を疑い検査する必要があります。
原因
転倒により起こりやすい骨折です。
診断と治療
大腿骨頚部骨折の診断
大腿骨頚部骨折は、レントゲン検査で診断できることがほとんどです。
骨折した骨の位置のずれ(転位)がない場合は、レントゲンのみではわかりにくいため、CT検査やMRI検査を行うこともあります。
足の付け根やお尻の痛みが続くにもかかわらず、上記の検査で明らかな骨折を認められない場合も、数週間後に再度同じ検査をすることで骨折が明らかになることがあります。
大腿骨頚部骨折の治療
1) 外科的手術
手術をすることで根治できるので、早期離床や早期歩行訓練を開始するためにも、手術が第一選択肢になります。
骨折している部分や、骨折の型に応じて、以下の種類があります。一般的に、骨折による骨のずれが大きい場合は、人工骨頭置換術を行います。
● 骨接合術
ピンなどの道具で、骨折した骨を元通りにくっつける手術です。
人工骨頭置換よりも手術による身体の負担が少ないため、術後の筋肉や歩行機能の回復が良いのが特徴です。大腿骨に異物を挿入するので、感染や骨頭壊死の危険性があります。
● 人工骨頭置換術
大腿骨の股関節の部分を人工の骨に取り換える手術です。
股関節の部分で、大腿骨が骨盤の関節部分からずれてしまう脱臼が起こりやすいデメリットがあります。しゃがんだりする特定の姿勢で脱臼しやすいので、術後の生活での注意点について、よく理解する必要があります。
2) 保存的治療
以下のような場合は、安静にすることで自然に治癒するのを待ちます。
● もともとかかっている病気や、全身状態が悪いため、手術に耐えられない場合
● 手術をしなくても早期にリハビリが始められる場合
3) 牽引治療
骨折の状態によっては、正しい位置に接合するよう整復する必要があります。
そのため、重りをつなげて持続牽引しながらの安静になる場合もあります。治癒するにつれ、重りは徐々に軽いものに変えていきます。
重りのつけ方により、以下のような種類があります。どちらの場合も、リハビリを始めるまでに1ヶ月から数ヶ月を要します。
● 直達牽引
重りをつけるための金具を手術で骨に刺入します。骨を直接牽引するため、より効果的に整復できます。
● 介達牽引
足に装具を固定して、装具に重りをつけて牽引します。付け方や時間の経過により、効果的な牽引ができないことがあります。
予防
高齢の方の転倒を予防しましょう
転倒をしないようにすることが、大腿骨頸部骨折の予防になります。
高齢者に多い骨折であるため、本人と家族は以下の点を注意するようにしてください。
● 生活空間の転倒しやすい場所(トイレ、浴室、廊下など)に手すりを設置する
● 外出時は杖を使う
● ふらつきが強いときは、無理して動かない
● 歩行に不安があるときは、一人で外出しない
医療機関受診のポイント
転倒後などに、足の付け根やお尻に痛みを感じたら受診しましょう。
診察室で医師に伝えること
医療機関を受診する際は、以下を医師に伝えましょう。
● 痛みの程度や場所
● 転倒など、痛みのきっかけになった出来事の経緯
● かかったことのある病気
● 内服中の薬(お薬手帳を持参しましょう)
受診すべき診療科目
● 整形外科