症状
手首の痛みや腫れ、変形、指先のしびれなど
手関節骨折では、以下の症状がみられます。
● 痛み
手首に強い痛みを感じます。
手に力が入らなくなり、手の重みでも痛みを感じるため、骨折した手を逆の手で支える姿勢になります。
● 腫れ、変形
手首の内側が急激に腫れます。腕の骨が手首の下側にずれるような変形が見られます。
● しびれ
折れた骨や腫れが神経を圧迫することで、指先にしびれを感じることがあります。
● 皮下出血
骨折の衝撃で血管が傷ついた時は、骨折部に皮下出血を起こします。
● 血流障害
腫れや出血、骨片により、血が指先まで行き届きにくくなるため、指先の血色が悪くなります。
原因
手首に大きな力が加わることにより起こる
転んだ時に手をついて支えるなど、手首に大きな力が加わることにより起こる骨折です。
子どもでは、鉄棒などから転落した時に起こりやすい骨折です。
高齢者や骨粗しょう症の方は、骨がもろくなっているため、特に大きな力が加わらなくても折れてしまうことがあります。
診断と治療
手関節骨折の診断
レントゲン検査で手首の関節内の骨折が認められます。
レントゲン検査だけで十分な所見が得られない場合は、CT検査も行います。
手関節骨折の治療
手首の関節は、小さな骨が積み木のように積み重なり、それぞれが靭帯でつながっています。これらの骨が連携して動くことによって、手首の自由な動きができるようになってます。そのため、その積み木を上手に元通りに積み直すことが、手関節骨折の治療の大きな目標になります。
1) 整復固定
麻酔を使って痛みを抑えてから、医師が手を引っ張ることにより、ずれた骨片を元の位置に戻す処置を行います。
ずれた骨片が元に戻り、医師が手を外してもずれない場合は、整復成功です。ギプスなどで固定し、折れた部分の骨がくっつくまで安静にします。麻酔は使いますが、痛みを感じることが多い処置です。
ギプスでの固定は1ヶ月以上必要なことが多いです。その間、筋肉や関節を使わないため、ギプスを外した後に、骨折前より手の指や手首の動きが悪くなることがあります。そのような場合、リハビリが必要になります。
整復できたように見えても、ギプスで固定する間に骨片がずれてしまうことがあります。
特に、骨粗しょう症がある場合は、骨の強度が弱いため、整復しても崩れるように骨がずれてしまい、骨折した部分に段差ができてしまうことがあります。
段差が大きく、整合がうまくできていない場合は、ずれた骨が神経を圧迫することで手首の神経を痛めてしまうことがあります。手首には正中神経や橈骨神経などの手を動かすために重要な神経が通っています。これらの神経が損傷することで、骨折が治った後も、長く続くしびれや痛みなどに悩まされることがあります。
また、固定で治った後の骨は、骨折する前の骨より短くなることがあります。そのことにより、手首の細かい動きが制限されるなどの後遺症が残ることがあります。スポーツを本格的にやっている若い人の骨折の場合などは、固定よりも手術を選択することがあります。子供の骨折の場合は、正しく整復ができなくても自然に正しく癒合されることが多いため、ギプス固定で様子を見ることが多いです。
2) 手術
整復で骨のずれが治らない場合は、手術を行います。
手術の方法により、大まかに次のように分類されます。
● 観血的固定術
骨折した部分を切開して、骨を整復してプレートを使って固定します。
骨折した部分の整復と、しっかりした固定ができますが、実際に切開して操作する分、傷の感染や、手術の操作による神経損傷などのリスクは大きくなります。
● 創外固定
鋼線などを使って、骨を正しい位置に固定します。固定している装置が身体の外にあるので、少し痛々しい見た目になります。
数週間後に、骨がくっついていることを確認してからピンを抜きます。ピンを抜くのは外来で短時間で行うことができます。
皮膚を切開せず、数ヶ所にピンを挿入するだけで済むため、手術より感染のリスクが少なくて済みます。また、固定している部分以外は手術直後から自由に動かせるため、生活に支障をきたすことが少なくて済みます。
予防
高齢者や子どもの転倒に気をつけましょう
転倒を予防することが大切です。
● 70歳以上の高齢者は、なるべく自転車での移動を避ける。
(自転車に乗ったまま横に転んだ時に、手をついて骨折することが多いため)
● 屋内の段差を少なくし、階段や段差の上り下りには手すりを使用する。
● 子供が鉄棒をする場合は、近くで大人が見守る。
医療機関受診のポイント
転倒などで手首に強い力が加わった後、痛みがある場合や、しびれ、腫れがある場合は、医療機関を受診しましょう。
診察室で医師に伝えること
医療機関を受診する際は、以下を医師に伝えましょう。
● 痛む部位と、どんな時に痛むか
● 痛みのきっかけになった出来事の経緯(転倒など)
● かかっている病気
● 内服している薬
受診すべき診療科目
● 整形外科