症状
薬指から親指にかけてピリピリとしたしびれや痛み
手根管症候群は、手を通る正中神経が圧迫されることで末梢神経に障害があらわれます。
正中神経の支配領域部分である指を中心に症状がみられます。
● 薬指から親指にかけてピリピリとしたしびれや痛みがある
● 明け方に手の指のしびれや痛みが強くなる
● 指の痛みのために、夜間目が覚める
● 読書・自動車の運転・炊事など手を使う運動でしびれが強くなる
● 手を振ると痛みが軽くなる
● 物がつかみにくい
原因
手の使いすぎやホルモンバランスも原因に
手根管症候群はなんらかの原因により、正中神経を通る手根管の内部が圧迫されることで起こります。
手根管症候群を引き起こす具体的な原因には次のようなものがあります。
● 手の使いすぎ
仕事やスポーツなどにより手を酷使したときに、正中神経への物理的な負担が増えることで起こります。
● 病気やケガによるもの
骨折、関節リウマチ、腱鞘炎、ガングリオンなどの腫瘤などにより、正中神経が通る手根管内の圧が上昇することで、正中神経を圧迫するようになります。
また、透析をしている患者さんはアミロイド沈着といって特殊なタンパク質が体の器官に沈着するようになるため、手根管症候群がみられるようになります。
● そのほかの原因
妊娠中のむくみのある女性や、閉経後の女性などにもみられるため、ホルモンバランスも原因のひとつとして考えられています。
診断と治療
手根管症候群の診断
手根管症候群の診断には、症状の問診により比較的すぐに診断ができるものです。
また、診断の補助として次のような検査が行われます。
● ファーレンテスト
手の関節の屈曲をみる簡単なテストです。手根管症候群では手首を深く曲げると、しびれが現れます。
● 神経伝導検査
神経に弱い電流を流して、信号が伝わる範囲や速さを確認します。
糖尿病など、そのほかの病気により手の感覚が鈍くなっている場合は、検査結果に影響が出る可能性があります。
● 超音波検査
超音波を当て、その反射を映像化することで、内部の状態をみることができます。
手根管症候群の超音波検査では、ガングリオンや関節炎の有無や骨や関節、神経の異常の有無を確認することができます。
● MRI検査
強い磁石できたドーム型の検査機に入り、磁気の力により体の内部を画像化する検査です。
正中神経の腫れや正中神経の圧迫部位の特定することができます。
● 血液検査
糖尿病の有無を確認するために、体の血液を採取して検査します。
手根管症候群の治療
手根管症候群の治療は、原因によって次のものが行われます。
● 手の安静
日常生活の中で手を酷使しないように生活指導が行われます。
手の安静を保つために、装具による固定が行われる場合もあります。軽症の場合、安静にすることで症状は改善されます。
● 温熱療法
しびれや痛みを和らげるために、患部を温める治療が行われます。
● 薬物療法
飲み薬や貼り薬による痛み止めの投与や、神経の修復を促すためにビタミン剤の投与が行われます。
症状が中等度である場合には、炎症を抑えるためにステロイド注射やステロイドの内服が行われる場合があります。
● 手術療法
対症療法では手根管症候群が改善しない場合、外科的手術によって、症状の原因となる手根管内の圧迫を取り除きます。
具体的な方法としては、手根管の上部にある靭帯の切開が行われます。
予防
手の使いすぎに注意しましょう
手を使いすぎることでリスクが高まるため、日常生活の中で手の酷使を避けることが大切です。
手根管症候群を予防するための具体的な方法は、次のようなものになります。
● 手を使う作業をする場合は、小休止を取り、手首を回すなどの軽い運動をする。
● パソコンで作業を行うときは、手首が曲がりすぎないように、肘と同じ高さになるように調節する。
医療機関受診のポイント
手根管症候群をそのままにしておくと、親指の付け根の筋力が低下するため、日常生活に必要な動作が困難になります。手の指のしびれや痛みを感じる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
診察室で医師に伝えること
医療機関を受診する場合は次のことを医師に伝えるようにしましょう。
● 手のしびれや痛みの範囲や強さ
● 手のしびれや痛みが強くなる時間帯や日常動作
● 手の骨折や糖尿病など病気の既往歴
受診すべき診療科目
● 整形外科