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まんせいこきゅうふぜん 慢性呼吸不全

呼吸不全の状態が1ヶ月以上続く

診療科目

内科 呼吸器科

からだの部位

胸部

分類

呼吸器

症状

日常生活での息切れや呼吸困難感

慢性呼吸不全の主な症状は以下のとおりです。
大気中の酸素を取り込めず、血液中の酸素が減少することを低酸素血症といいます。
また、体内でできた二酸化炭素を十分に体外に排出できず、血液中に二酸化炭素が増加することを高二酸化炭素血症と呼びます。

それぞれ次のような症状がみられます。ただし、ゆっくりと進行するため、はじめは自覚症状がないことも多くあります。

1) 低酸素血症による主な症状
息切れ
呼吸困難 など

2) 高二酸化炭素血症による主な症状
頭痛
眠気
発汗
血圧の上昇
手がピクピクする(羽ばたき振戦) など

原因

肺の病気だけでなく、神経や筋肉の病気も原因に

慢性呼吸不全の主な原因は以下のとおりです。
肺の病気だけでなく、神経や筋肉の病気でも起こります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)
肺結核後遺症
間質性肺炎
肺がん
筋萎縮性側索硬化症
筋ジストロフィー     など

診断と治療

慢性呼吸不全の診断

慢性呼吸不全の診断では、動脈の血液中の酸素と二酸化炭素の量を調べます。
通常、動脈の血液中には100mmHg程度の酸素が含まれていますが、これが60mmHg以下になることを呼吸不全といいます。この状態が1ヶ月以上続くことで慢性呼吸不全と診断されます。
また、動脈の血液中の二酸化炭素量を調べることで、呼吸不全を以下のように分類します。

Ⅰ型呼吸不全:
血液中の二酸化炭素の増加を伴わない場合(動脈血炭素ガス分圧45Torr以下)

Ⅱ型呼吸不全:
血液中の二酸化炭素の増加を伴う場合(動脈血炭素ガス分圧45Torr以上)

その他にも胸部レントゲン検査や心電図、細菌培養検査などにより肺機能や呼吸不全の原因を調べるための検査を行います。

慢性呼吸不全の治療

慢性呼吸不全の治療では、原因となっている病気の治療に合わせて、以下の治療を行います。

在宅酸素療法(HOT)
日常生活でも酸素を吸入し、血液中の酸素濃度を保つ方法です。
自宅に専用の酸素提供器を設置し、細長いチューブを通して酸素を吸入します。外出時には携帯用の酸素ボンベを使用します。

喚起補助療法
血液中の二酸化炭素の濃度が高い場合には、機械の力を借りて呼吸の補助=人工呼吸を行う方法です。
従来の人工呼吸では、気管に管を入れて空気を送り込んでいましたが、この方法では声が出せなくなります。
最近では非侵襲的陽圧交換(NPPV)と呼ばれる特殊なマスクを使用することで、気管に穴を開けずに対応できるようになりました。鼻や顔に密着したマスクを装用し、肺の中に空気を送り込む方法です。

呼吸リハビリテーション
酸素吸入量の調整、運動療法、呼吸筋訓練、排痰法の指導、栄養指導などを呼吸リハビリテーションと呼びます。呼吸リハビリテーションを行うことで、生活の質や日常活動の改善を促します。

医療機関受診のポイント

日常生活の動作でも息切れするという場合は早めに受診を

階段の昇り降りなど日常生活の動作で息切れすることが多いという方は、肺の機能が低下している可能性があります。病気が進行し、慢性呼吸不全になる前に適切な治療を受けることが大切です。

診察室で医師に伝えること

診察の際には、医師に以下を伝えましょう。

いつ頃からどのような症状があるか
肺の病気と診断されたことはあるか
そのほかに病気はあるか

受診すべき診療科目

内科
呼吸器科

症状が急激に悪化し、意識低下などが見られる場合には、救急車を呼んでください。

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