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くいんけふしゅ(けっかんせいふしゅ) クインケ浮腫(血管性浮腫)

まぶたや頬、唇、口の中が突然腫れる

からだの部位

皮膚

症状

まぶたや頬、唇、口の中が突然腫れる

クインケ浮腫の症状は、突然、皮膚が部分的に腫れることです。
腫れが引くまでに1〜3日ほどかかりますが、やがて跡形もなく消失します。じんまんしんのような赤みやかゆみなどの症状は伴いません。
皮膚や皮膚の下にある組織が腫れることで伸び、痛みを感じることがあります。まれに吐き気や嘔吐、腹痛、下痢などの症状が現れることもあります。

皮膚、粘膜であれば、どこにでも症状があらわれる可能性があります。
特にまぶたや唇、顔、首、舌などは症状があわられやすい部分です。口の中、特に喉に症状があらわれた場合、呼吸がしにくくなり、窒息するおそれがあります。息苦しさを感じる場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

原因

遺伝的にクインケ浮腫が起こりやすい人がいる

クインケ浮腫の原因には、アレルギーや外部刺激(日光や温度など)、薬の副作用などさまざまなものがあります。
また、遺伝的にクインケ浮腫が起こりやすい方とそうでない方がおり、大きく「遺伝性クインケ(血管性)浮腫(HAE)」と「後天性クインケ(血管性)浮腫(AAE)」に分けられます。

遺伝性クインケ(血管性)浮腫(HAE)
10歳頃から繰り返し症状が現れ始めます。手術や抜歯、感染症、妊娠、経口避妊薬など何らかの原因がきっかけとなり症状が現れますが、きっかけが不明なケースも少なくありません。また、生涯にわたり症状が現れないケースもあります。
体内には、細胞に必要以上の水分が移動するのを防ぎ調整する役割を持っている「C1インヒビター」というタンパク質があります。遺伝性クインケ浮腫の方は、生まれつきC1インヒビターが少ないことや、上手く機能していないことが原因となり浮腫が現れます。

後天性クインケ(血管性)浮腫(AAE)
後天性クインケ浮腫の方も、同様にC1インヒビターの不足や機能不全により症状が現れることがあります。


【薬剤が原因となる場合】
遺伝性や後天性でC1インヒビター欠損症の方は、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬やエストロゲンの服用により、発作が誘発されることがあります。
同じ薬剤でも、使用した方すべてがクインケ浮腫を起こすわけではありません。遺伝的に発症しやすい可能性もあるため、薬剤を使用する方だけではなく、ご家族に薬剤でクインケ浮腫を経験した方がいないかも確認しておくとよいでしょう。
クインケ浮腫の原因となる薬剤は、非ステロイド性抗炎症(NSAIDs)や高血圧薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬など)、経口避妊薬、ペニシリン、線溶系酵素などが知られています。

診断と治療

クインケ浮腫(血管性浮腫)の診断

クインケ浮腫が疑われる症状が現れた場合、クインケ浮腫によるものなのか、他のものが原因で起こっているのかを鑑別する必要があります。
そのため、症状の現れ方や出現時期、使用薬剤などの問診と併せ、血液検査にて原因の特定が行われます。
血液検査は、症状が現れている時の方が識別しやすくなります。また、確定診断のために遺伝子診断が必要になる場合もあります。
喉の腫れから呼吸がしづらくなっている場合は、状態を確認するためにCTやMRIなどの画像診断が行われます。

クインケ浮腫(血管性浮腫)の治療

クインケ浮腫の治療は、原因がわかっている方がスムーズです。
アレルギーや外部刺激が原因となっている場合は、その原因を取り除きます。また、C1インヒビターの不足や機能不全が原因となっている場合は、C1インヒビター製剤やトラネキサム酸を静脈注射することで、浮腫の改善を期待できます。
浮腫が起こった原因となる薬剤が思い当たる場合は、使用した薬剤や添付文書などを持参し、医療機関を受診しましょう。

医療機関受診のポイント

突然まぶたや頬、唇、口の中、喉などが部分的に腫れた場合はクインケ浮腫が疑われます。特に呼吸が苦しくなった場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

診察室で医師に伝えること

クインケ浮腫は3日ほどで症状が治まりますが、症状があるうちに受診をした方が原因の特定がしやすくなります。できる限り症状があるうちに受診しましょう。受診の際は以下の情報を伝えてください。
いつ頃から症状が現れたのか
きっかけと思われる事柄はないか(食べ物や薬剤、外部刺激など)
吐き気や嘔吐、腹痛、下痢などの症状の有無
服用している薬の有無や種類
家族に似たような症状が現れた人はいないか
手術歴や抜歯、他の病気の有無

受診すべき診療科目

皮膚科
アレルギー科

くいんけふしゅ(けっかんせいふしゅ) クインケ浮腫(血管性浮腫)