症状
胸やけなど逆流性食道炎によく似た症状
消化管カンジダ症の症状は、一般的に以下のような症状があることが多いです。逆流性食道炎の症状によく似ているといわれています。
● 食べ物を飲み込みにくく感じる(嚥下困難)
● 飲み込む時に痛みを感じる(嚥下痛)
● 胸やけ
● みぞおち付近が痛い など
また、カンジダ症ではカンジダというカビが菌糸を伸ばして消化管壁を貫くのですが、その時に有機酸物質を産出します。
有機酸は消化管で摂取した栄養分をエネルギーに変換する回路を阻害してしまいます。エネルギー変換がうまくいかなくなることで、慢性疲労の症状も現れることがあります。
一方で、必ずしも何らかの症状があるというわけではなく、内視鏡検査を行った時に、偶然に消化管カンジダ症が見つかるケースも少なくありません。
原因
腸内バランスが崩れたときにカンジダという常在菌が悪さ
消化管カンジダ症を起こす原因となる菌は、カンジダという真菌(カビ)の一種です。
カンジダは人間の皮膚や口腔内、消化管などに広く存在する常在菌です。常在菌とは人間の身体に存在しうる微生物のことをいい、通常は悪影響を及ぼしませんが、免疫力が低下したりすると増殖を始めます。
赤ちゃんはお腹の中では無菌状態で育ちますが、お母さんのお腹から出た瞬間から、口や肛門を介して微生物と接触します。そして、それらの一部は皮膚、口腔内、消化管内に常在菌として定着するのです。
皮膚、口腔、腸内で定着した微生物は、それぞれの細菌叢(さいきんそう)を作り、バリア機能を果たしています。腸内細菌は400種類、数にして100兆個を超えるといわれていて、それらが腸内細菌叢(腸内細菌フローラ)を形成しています。腸内細菌の99%は細菌が占めていますが、真菌も一部含まれていて、健康な人の約7割から真菌が検出されるといわれています。そして、それら真菌の多くはカンジダなのです。
腸内細菌の多くは空気を嫌う嫌気性の細菌なので、腸内の環境は最適といえますし、食べ物にも苦労することがありません。人間にとっても腸内に細菌が住み着くメリットはあります。腸内細菌は人間が代謝できないものを分解してくれたり、病原菌から人間を守ったり、人間の免疫機能を向上させることなどに役立っています。
しかし、良いことばかりではなく、腸内細菌叢のバランスが崩れてしまうと、病気を引き起こしてしまう恐れがあります。消化管カンジダはその1つです。
腸内細菌叢のバランスが崩れる原因として考えられることはいくつかあります。
● 抗生物質の使用
抗生物質によって腸内細菌が少なくなり、抗生物質では死滅しない真菌のカンジダが繁殖しやすくなるのです。
● 胃薬の使用
胃酸や消化酵素などはカンジダの繁殖を抑える効果があるのですが、胃がもたれたり、胸やけがあったり、胃潰瘍などで制酸薬を内服している場合、カンジタが増殖しやすい環境を自ら作っていることになります。もともと消化液の分泌が低いという人も同様です。
● 免疫機能の低下
抗がん剤やステロイド剤による治療を行っている方、糖尿病の方は免疫機能が低下しやすいので注意が必要です。免疫力の低下という意味では、ストレスなども関係しています。
● 高脂肪な食生活
高脂肪な食生活を続けることも、腸内細菌のバランスを壊して消化管カンジダ症が発症する原因となります。腸内細菌を増やすには、オリゴ糖や水溶性食物繊維が含まれた食品を積極的に摂取しましょう。
診断と治療
消化管カンジダ症の診断
消化管カンジダを疑うときは、内視鏡検査によってカンジダ感染の有無を確認します。
消化管壁に白い苔状の隆起物が連続して連なり、水で洗い流そうとしても取れないのが特徴です。食べ物の残りである場合には流されてしまいます。
医師であれば、内視鏡検査で比較的に容易に診断できますが、確定診断をするには白苔(はくたい)を摂取して細菌検査を行う必要があります。
消化管ガンジダ症の治療
消化管カンジダ症の治療の基本は、抗真菌薬の内服か点滴治療になります。
軽症の場合や、内視鏡検査で偶然に見つかった場合などでは、治療をせずに自然に治癒することもあります。
悪性疾患や糖尿病などの基礎疾患により免疫機能が低下している可能性がある場合には、慎重な治療を開始します。
カンジダが血液中に入り込んでしまうと、敗血症といった重篤な病気を招くことがあるので注意が必要です。
予防
腸内バランスを整える生活習慣を
消化管カンジダ症の予防には腸内細菌のバランスを良い状態に保つことが大切です。
ポイントは以下のとおりです。
● バランスの良い食生活を心がける
腸内細菌の餌となる水溶性食物繊維である玉ねぎやゴボウなどの根菜類、きのこ類、海藻類を積極的に摂取するとよいでしょう。
また、高脂肪や高たんぱくの食事を続けると、腸内細菌叢の乱れを生じるので、食事のバランスにも気を配る必要があります。
● 内服薬に注意する
病気を発症する細菌が繁殖した場合、抗生物質は有効ですが、体内に必要な細菌までも殺してしまい、腸内細菌のバランスが崩れる原因になります。胃酸を抑える胃薬もカンジダの増殖につながる恐れがあります。必要以上に使いすぎないように気をつけましょう。
● 十分な休養をとる
睡眠時間をきちんと確保し、適度な運動をしてストレスの解消を心がけることも、免疫機能をしっかり働かせることになるので、消化管内においてカンジダの思わぬ繁殖を防ぐことになります。
医療機関受診のポイント
胸やけなどの症状が続く場合には受診しましょう
抗生物質の使用後やストレスなどで免疫の低下の恐れがあるときに、食べ物が飲み込みにくい(嚥下困難)や飲み込む際に痛みを感じる(嚥下痛)、胸やけ、胸痛などの症状が続く場合には、医療機関を受診しましょう。
診察室で医師に伝えること
受診時には以下のことを医師に伝えましょう。
● どのような症状がいつからあるか
● 最近、抗生物質を投与されたか(何の薬をどれくらいの期間、服用したかも伝えます)
● 糖尿病や慢性の疾患を患っているか
● 市販の胃薬など服用した薬
受診すべき診療科目
● 内科
● 消化器科
念のために内視鏡検査ができる施設を選んでおくとよいでしょう。